昭和60(1985)年3月、イラクと戦争中であったイランの首都テヘランの空港では、日本人200人以上が、今か今かと、イラン脱出のための救援機を待っていました。
しかし諸外国は軍用機や民間機を動員して手際よく脱出したのに、当時の我が国の政府や関係機関は、「搭乗員や機体の安全の保障がなく危険である」という理由で、速やかな救援活動を行いませんでした。
イラクによる攻撃のタイムリミットが刻一刻と迫り、救出を待つ邦人たちの不安と緊張が最高潮に達したぎりぎりのタイミングで救援のために飛び込んできたのがトルコ航空機だったのです。
それは「明治23(1890)年のトルコ軍艦・エルトゥールル号の遭難時における、大島の島民をはじめとする和歌山県串本町の町民の献身的な救出活動、また明治天皇や政府のみならず、一般国民にいたるまで、朝野を挙げての介護と慰労・義捐、更には、5百数十名に及ぶ殉難将兵への約100年に亙る手厚い慰霊に対する恩返しをするにはこの時をおいてほかにはない」という、当時のトルコ政府の英断によってなされたことでした。
トルコの国民は歴史教科書において『エルトゥールル号遭難』のことと、日本人の勇敢さや仁愛の深さを教えられているそうですが、残念なことに、我が国においては、イラン・イラク戦争時の邦人救出劇における、トルコ人の命を懸けた活躍を知る機会は殆どありません。
今回、トルコ人の勇敢さや誠実さ、そして、我々日本人の魂の深奥に沈潜する惻隠の情を顕彰するために本書を刊行いたしました。
皆様におかれましては、日土両国の友好の歴史を子々孫々に伝承するためにも、是非とも、子どもたちへ『読み聞かせ』していただきたいと願っております。
平成20年7月7日
NPOふるさと日本プロジェクト |